8時間20分 ナレーター:橋下 愛
ずいぶん前に映画は観ました。松たか子主演のあの映画。怖い映画でしたね。怖いにも色々あるんだという感想のあの映画。あれは松たか子の演技が凄すぎたと言っても良いかも。
これはその原作作品。2009年の本屋大賞受賞作品。昨日にaudibleの読み放題に新しく加わったので早速、ダウンロードしておいた。
すでに知っている内容の本を、特にこれは面白いという作品を改めて聴くのは安心して聴けるという点で楽しみ!
Bluetoothのスピーカーを準備して、オーディブル音読スタート。同時に窓枠を掴んでスクワットを始める。最初の教師の告白が始まる。物語の進行に合わせて、腕立て伏せ、腹筋をワンセットで休憩を挟みながら何セットか繰り返す。疲れてきたのでゴロリとしながらオーディブルに集中して目を閉じる。
休日の半日はこんな風に過ごしたりすることもできます。
この物語は事件の関係者が順番に長い長い語りを紡いでいく。映画でのこの手法は知らないので斬新でしたね。小説ならドフトエフスキーなんか独白いつまでやるの!?って毎回なります。
映画では松たか子が主演というわけでもないのですが、最初と最後に鮮烈なイメージを残すのでそう思ってしまうのも仕方ない。
次第に明らかになっていく事件の真相。ティーンズのみならず、大人であるはずの教師や親でさえも何かが欠けている。何かを必死で守ろうとする。欠落を埋めるために欲しているのは親の愛か、倫理か、賞賛か。正義と悪は一本の線でキッパリと分けることができないことを歴史の中で人間は繰り返し証明してきた。突き詰めれば極めて宗教的な命題。答えは無いのだ。
そしてこの小説には重要なテーマが含まれていると思う。それは親である。特に母親の子供への執着が異様である。現代社会の病理の本質はここに隠されているのではとさえ思う。60歳も近いおっさんにすれば、若中年域にある母親と娘、息子が巷で仲良くショッピングに連れ立っているなんて信じられない。我々からするとアリエナイことなのだ。
子供は親とは思春期頃から細々とした繋がりを維持したまま、あるいは隔絶・途絶した後に、社会に出て、独立、結婚などの多くの社会的経験を重ねることで再び親の元に帰ってくるものだと思ってきた。多くを学び、自分の無力と親の有り難さを骨身に染みて帰ってくるものと思ってきた。
自分の出来なかったことを子供に託し、夢を見るのは善なのか悪なのか。君はどう思う?
ネタバレサイトやレビューでは最後のシーンについて色々憶測があるが、そのまま受け取れば良いんじゃないの?と思う。読者が思い描いた結末が正しい。というか断言して押し付けるのは良く無いよな。そういう見方もあるよねと思うのがいい。