audiobook.jp 6時間52分 ナレーター:島本須美
アマゾンaudible 6時間5分 ナレーター:白川周作
医療が高度になり人が死に時を失いつつある今、我々にはどういった選択肢が残されているのか。我々は個人の意思を尊重してもらえる環境にあるのか。
終末医療、地方医療、医局の問題等々を医療を受ける側の我々ももっと知っておく必要があるなと感じる作品でした。
いいじゃないか、この本。何度か涙ぐんでしまった。(最近、涙脆い)
そして文章がいい。夏目漱石マニアの医師の口調が漱石風なのです。私はこういう文章が大好物なのです。
医療の本質にうまく迫っている物語でありました。医療問題について論じられる場合、大抵は新聞のような論調で問題を提起しながらも、人の心に全く響いてこない言い放しの感じがする。だからどうなんだと、それでどうしろと思うだけである。
医療関係者の苛烈な労働環境、周囲の愉快な仲間との交流も垣間見せながら悲喜こもごもなかなか面白い話の進行でありました。
医者夫婦がオンボロアパート住まいという設定に無理を感じるが、こんな医師がいたら面白いね。
夏目漱石風の口調の若き医師が命に真摯に向き合い、患者が望んでいる医療を目指す姿は人間味にあふれ、カッコいい。最愛の細君も魅力的な人物でこれも良い。
個人のクリニックなら医師は時間も調整できるだろうが、地方の大きな病院ともなるとこんな感じのフル回転し続ける勤務状態になるのだろうか。一般の人には全くわからないですね。きっと内輪で自重気味にその過酷な勤務状況を笑っているしかないのだろうな。時間と休息と引き換えに高給であるのは最低条件とも言えるね。
この作品は「audiobook.jp」と「アマゾンaudible」の両方で聞きました。多くのレビューにあるように「アマゾンaudible」では男性ナレーターに相当違和感があると思う。やりすぎの演劇役者になっちゃているから変なんだよね。朗読なのだからこんなことしなくていいのにな。
対して「audiobook.jp」では女性ナレーターでこちらの方が自然体で断然良い。
この作品に関して言えばこの女性ナレーター島本須美さん朗読のaudiobook.jpが圧倒的に良いです。
ただしシリーズ化された続編はaudiobook.jpにはないのであった。続編の登場を切望します!
ただし編集のミスで最後が切れてしまったり、章と章の間が短すぎるなどの不満点もあります。