野外活動でマダニに咬まれた場合の危険性:マダニ媒介の感染症については知っておきたい

ダニ

マダニに半日ほど吸血されてしまった。

気がついたのは部屋の床に4、5ミリの丸っこい小さな虫が歩いているのを見つけた時。あ、あのカサブタはこのマダニだったのか。それぐらいマダニは噛まれていても気が付かないものです。周辺に鹿がとても多いので、気を付けているのですが、それでもやっぱりやられた。

マダニは小さいけれど非常に危険なやつです。正確には昆虫ではないそうですが、クモなどに近いこの節足動物に寄生する病原体が大変よろしくないのです。もし噛まれたら1、2週間は注意が必要です。

マダニの奇襲

 この日は朝から植栽の剪定をしていました。背より高くなった椿を刈り込んでいたのですが、用心してハット、ウインドブレーカー、長ズボン、長靴、手袋の完全防備ですが、手首だけはどうしても少し肌が出ます。作業中から草で手首が少し切れてカサブタができているのかなとは思っていました。

 遅い昼食に部屋に戻った時、まだ手首にカサブタがありましたが、気にせずバタバタ払ったら、いつの間にか無くなっていた。夕方に手首が痒くなってきて、擦れたような血のあとが。あっと思って床を見ると少し血を吸って大きくなったマダニ。動きが変なのは頭と足が何本か取れてしまったからだった。

 手首をよく見るとまだ小さなカサブタの様な赤黒い塊が付いている。指でぐっと押し出してみると取れた!でもまだ何か刺さっているようだ。今度はルーペを持ち出してよく観察する。2本刺さっている。マダニの口だ。もう一度、爪で患部をギュッと押し出してみたら今度は綺麗に取れた。何度か絞って汁が出なくなってから薬を塗った。薬といってもムヒしかないのだけど、、。

 さあ、痒い痒い!4、5日は痒かったです。ここで気になるのはマダニが媒介する感染症。そろそろコロナのワクチンが打てる時期が来ているのだけど、このマダニ感染症は数日から2週間ほど潜伏期間があるので、しばらく様子見です。熱が出たら、コロナ症状やワクチンの副反応とかの区別が付きにくいですからね。

 マダニは噛み付いて頭が皮膚の中に食い込んでいきます。この時、麻酔成分を出しているので、痛みがないらしいのです。私は頭が少し食い込んだあたりで、偶然はたき落として、頭や足の取れたマダニが床に落ちていたのですね。普段から小さな切り傷など気にしない人は私のようなパターンでなかなかマダニの刺咬に気が付かないことが多いです。いつもマダニの存在を気にしながら体を点検しましょうね。

マダニが媒介する感染症

リケッチア感染症

 リケッチアというのはウィルスでも細菌でもない微生物。ダニやネズミノミ、シラミなどが媒介する細胞内寄生体とも言うらしいです。大きさは細菌>リケッチア>ウィルスのような違いがあります。

ツツガムシ病

 ツツガムシというダニが媒介する伝染病。1ミリにも満たない小さな幼虫時に吸血されると危ないです。「つつが無きように」という昔ながらの挨拶の語源となっているのは有名ですね。かつては寒冷な東北地方の風土病として恐れられていた感染症ですが、現在では種類の違うダニによるツツガムシ病が九州でも報告されています。ツツガムシから動物への病原体の移行には6時間以上が必要らしいので、早期発見で難を逃れることが出来るかもしれません。

日本紅斑熱

 リケッチアによる感染症で、ツツガムシ病に症状が似て赤い発疹ができる。北米や地中海など地域によって名前のついた同様の感染症が存在する。病状が進行してしまうと、重篤な疾患につながるのでやはり早期の発見と治療の開始が重要です。

ライム病

 シュルツェマダニから細菌(スピロヘータ)が人間に侵入して発症する。私はカナダ歌手のアヴリル・ラヴィーンがこれで長い間闘病していたことを公表して初めて知った病気でした。最近ではジャスティン・ビーバーも闘病中とか。ライム病は予後もなかなか良くならないので大変そうです。数万人の患者が発生する欧米に比べれば、日本では症例は少ないようですが、確実に日本にもいます。初期の治療開始が重要です。感染初期の紅斑が特徴的なので見逃さないようにしたいです。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

 SFTSウィルスを持つマダニに刺咬されて発症する感染症。最近、新聞でも死亡例が報道されることも多い感染症。特に高齢者は死亡に至ることもあるので気をつけたい。

 これらのマダニ媒介の感染症は重症化した場合の死亡率が30%もあるなど、かなり危険な感染症です。ですが、マダニの病原体の保有率は数%と言われているので、噛まれたら即アウト!という訳でもありません。100回噛まれたうちの数匹に病原体が存在している可能性があり、それが十分に体内に注入されて、発見が遅れて重症化したら死ぬこともあるかもしれないという感じですね。闇雲に恐れても仕方がないですが、予防できる部分も多いのでできる対策を十分してアウトドアを楽しみましょう。

マダニ対策として

 虫除スプレーなどにはディートやイカリジンと呼ばれる成分が含まれています。ディートは第二次世界大戦で米軍がジャングル戦で戦えるように開発した薬です。なぜ効くのかは未だ解明されていないらしいですが、膨大な成分を調合した末に偶然見つかった成分ということです。日本では30%濃度のものも販売できるようになったので、有効に活用したいところです。外国製にはものすごく濃度の高い製品も販売されています。プラスティックを溶かす成分なので、この点は使用時に注意が必要です。

 またここ最近は外仕事をした後は部屋に戻る前に、コンプレッサーの強力なエアブロアで全身を綺麗にして、用心しています。これもかなり効果有る感じですよ。