モモ / ミヒャエル・エンデ

12時間46分 訳者:大島かおり

私はかれこれ三十年以上この作品 ”モモ” を愛読しています。そして何度読んでも飽きたと感じることがないのです。もちろん”聴く読書”も何度も楽しんでいます。


「モモ」は ”無人島に持っていくただ一冊の本” とか ”最も好きな本” とか ”子供に読ませたい本” などのランキングでいつも上位に入るような本ではないでしょうか。児童文学というジャンルとされることが多いですが、とんでもないです。十分すぎるほどおとなの心にも沁み込んできます。ところが周りの人に聞いてみてもこの作品”モモ”を知らないという人も多いのです。とても残念なことです。


深いテーマ、少ない登場人物と強いキャラクター、本から取り出して単独で使っても通用してしまう強力なキーワード、場面設定など どれをとっても最高のセッティングになっているのではないでしょうか。

境遇的には全く恵まれた環境ではないにも関わらず、明るく感謝に満ちた少女モモの生活を描いた最初のほんの数ページですっかりモモに魅了されてしまいます。これはもちろんモモの特別な”才能”に我々も心酔してしまっているからでしょう。


1973年出版の本ですが、”悩み”はいつの時代も同じなのだと思います。

私はこのモモを読むといつもこんなことを思うのです。

・友達への感謝や思いやりとはかくも美しく温かいものなのだ
・時間の節約とは何を意味するのだろうか
・金を稼ぐということは何かを失うという意味だろうか
・ひとりきりであっても友達を守るためには闘うということ
・勇気とはガタガタと体を震わす寒さの正体と対峙すること

何度読み返してもそこに含まれた深いテーマを感じてしまう。作者ミヒャエル・エンデが意図的に何か含蓄のあるテーマを文章の間に埋め込んだわけではないでしょう。これは作者自身の生き方や思考が含まれた文章なのだなといつも思います。


ハードカバー本、文庫本でこの作品を読んできました。そして新しい時代の様式 ”聴く読書” が加わってもまだ楽しいのです。そして ”読み” ”聴く” たびに新しい気持ちになれるのです。こんな作品はもう出てこないかもしれないなぁ。

×2としたいぐらい満天の星に!

★★★★★

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